巻き爪(陥入爪)治療の実際               実際の症例→

 足の親指の爪が巻いてくる,いわゆる「巻き爪」(陥入爪)でお悩みの方は多いものです.

 従来はメスで巻いている爪を切る方法が主体でしたが,最近,科学の進歩とともに,新しい素材である形状記憶合金を用いた治療が行われるようになりました.

 形状記憶合金とは,知っている方も多いとは思いますが,元の形に戻ろうとする性質があります.

 これを巻き爪の治療に応用すると,下の図のように,爪に装着させると,形状記憶合金はまっすぐになろうとしますから,その力で爪を矯正します.

実際のやり方を図に示します.

ワイヤーを用いる方法(ワイヤー法)

プレートを用いる方法(プレート法)

 どちらの手術も,まったく痛みなしにすることができます.したがって,麻酔の注射もしません.入院も必要なく,外来で10分ほどで終了します.

 注)このやり方は,「手術」でありますから,医療機関を受診し行うようにして下さい.

手術の短所・長所

 二つの手術法はどうちがうのか,どのような基準で手術方法を選択しているのか,それぞれの短所と長所はどうなのか,について述べます.

ワイヤー法 プレート法

【長所】

●矯正力が強い.

●爪にしっかりと固定される

【長所】

●ずっとつけていられる

●寝具,靴下などを破損することがない

【短所】

●ワイヤーの出ているところが,靴下や寝具に当たりこれらを破損する

 →ワイヤーの部分にカットバン等を貼ることで靴下や寝具に引っかからないようにする.

●2ヶ月か3ヶ月すると,爪が伸びてきて長くなるので,ワイヤーをはずさなくてはならない.

●ワイヤーの矯正力は強いのだが,時として,爪の方がこの力に負けて割れてしまうことがある.→この時にはすみやかにワイヤーをはずします.危険なことはありません.

【短所】

●矯正力がワイヤーに比べて弱い → 1日に3回から4回ほどドライヤーで5分くらいプレートに熱を与えてなくてはならない.熱を与えると矯正力が強まる

●プレートが爪からはずれることがある → はずれたらまた爪に接着します

●プレートが爪からはずれてなくなってしまうことがある → 靴下を脱ぐ時,お風呂に入る時など細心の注意をしていただきます.

 つまり,プレート法もワイヤー法も一長一短がありますが,私としてはなるべくワイヤー法を行うようにしています.ただし,ワイヤー法をするには,爪がある程度伸びていなくてはなりません.しかし,巻爪になると爪がなかなか伸びてこないものです.また,深く爪を切った後で,どうにも痛くてたまらなくなり受診される方も多いものです.このような患者さんに痛みにこらえて爪が伸びるまで待たせるのも酷なものです.このような場合には,プレート法を用いて,とにかく痛みをなくするようにしています.


巻き爪治療の本筋とは何か? この治療の本当のメリットは何なのか?

 巻き爪(まきつめ)、医学的に正式には「陥入爪」(かんにゅうそう)と言います。読んで字のごとく、爪が丸まってきて、肉の部分に突き刺さり痛みを発生する病気です。

 これは、はたして爪が巻いているから悪いのでしょうか。私はそうではないと考えています。爪が丸まっていても何も痛みを訴えない人も沢山います。

 結論から言うと、爪が丸まっているから悪いのではなく、爪が不健康な状態にあるわけです。だから、痛みを発生するのです。

 ここで紹介した、形状記憶合金による巻き爪の治療の目的は、ともかく食い込んでいる爪を速やかに矯正し、爪の健康を取り戻すことにあります。

 実際に、この手術をすると1-2日で痛みは消えてしまいます。これはホラ話をしているわけではありません。本当に痛みは消えます。

 それでは、たとえばワイヤー治療をして、2-3ヶ月経った後、ワイヤーを抜きますがその後、爪はどうなるのでしょうか。

 矯正されたまま食い込まない爪になることもありますし、また、残念ながら元のように丸まってくることもあります。

 しかし、また、丸まってきて、痛みを発しても患者さんの表情はすごく明るいのです。それはまたこの治療をすると、痛みもなくすぐに痛みがとれる、ということが分かっているからです。
 そこに、この治療法の最大の長所があると私は考えています。

 さあ、それでは次に実際の症例(ケース)をお目にかけましょう。  症例へ→

 

 

 

 

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