骨粗鬆症の診療指針

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骨密度の計測
 骨粗鬆症の治療に当たり,骨密度を測ります.あなたの骨がどのくらいの量があるのか数字で知るためです.
 骨の計り方にはいろいろな方法があります.簡便法としては手で計るもの,かかとで計るものがあります.これらの検査は簡単にできるのでたくさんの人の骨を短時間で計ることができますが,これはあくまでも簡便法であり,ここで低い値が出た場合には,当院で行っているようなきっちりとした方法で計らなくてはなりません.
 さて,当院では世界標準のQDR(写真右)という器械で腰と大腿骨頸部(大腿骨の付け根)の3カ所で骨を測定します.これらの部位は骨粗鬆症が原因となる骨折が生じやすいところですし,また,人間の骨は一様に減ってくるものではありません.バラバラに減ってくることがあります.つまり腰の骨はたくさんあっても,大腿骨の骨が少ないケースも多いのです.
 骨粗鬆症とは骨量が20歳代の平均を100%とすると,これが70%以下になっているものと定義されています.実際に70%を下回っている場合,骨折が多く起きています.


食事のチェック             食事のことについて→Click here
 次に,当院では栄養のチェックをします.一日のカルシウム,ビタミンD,ビタミンKの一日の摂取量をアンケートから調べます.
 カルシウムは骨の原料であり,一日平均600 - 800mgとる必要があります.いろいろと調べていくと,一日のカルシウム摂取量が200mg以下という極端に少ない人が時々います.このような人は,やっぱり骨の量が少ないケースが多いようです.カルシウムは骨の原料で,これがなくては始まらない,という面があり,また,50歳以上の人の食生活はここ30年間ほどほとんど変わっていないものと考えられます.つまり,50歳の時点でカルシウム摂取量が少ない人は,一生にわたってあまりカルシウムを採っていなかったと言うことがいえると思います.ちりも積もれば山となる,です.低カルシウムの食事を長年続けていると,やっぱり,骨はダメージを受けるものです.


薬による治療
 骨粗鬆症の薬というものもあります.食事のチェックでカルシウムを補う目的でカルシウム剤を処方します.その他に,様々な種類の薬があり,それを適時使用していきます.しかし,常識的なことですが,薬を飲んだからといって,骨の量が急に増えると言うことはありません.あくまでも年齢とともに減っていく骨量を維持し,また,少し増やしていこうというものです.骨粗鬆症でもっとも効果的なのは運動療法です.


運動療法 これがもっとも大切だ!     運動療法について→Click here
 患者さんの運動歴もチェックします.50歳以上の方で運動を続けられている方,多いのは卓球,山歩き,社交ダンス,水泳,ゴルフ,ゲートボール,太極拳等ですが,このような方は本当に骨量といい,身体機能といいすばらしい方が多いようです.
 もともとが元気で健康なので年をとっても運動を続けられるという面も確かにあるでしょう.しかし,若いうちに何か自分で楽しんで続けられる運動を見つけ,70歳になっても80歳になっても続けると言うことが,骨にも良いく,長寿の秘訣です.よく,何か骨によい運動や体操はありますか,と尋ねられることが多いのです.また,世の中には骨粗鬆症に効く体操,というのが山ほどあります.しかし,そのような体操は地味なものが多く,とても続けられません.それ故に,何か楽しんで続けられるスポーツを見つけるようにとアドバイスしております.
 身体機能のチェックを行います.
 外来で片足でどのくらい立っていられるかを調べます.患者さんに実際に片足で立っていただき,タイムスウォッチで計測します.

ボンボン体操No.1

ボンボン体操No.2

ボンボン体操No.3

なぜ片足立ちか?
 骨粗鬆症は簡単に言うと骨が減って来る病気です.骨が減ると何が困るのかというと骨折しやすくなるから困るのです.さらに一歩話を進めて,骨折はどのようなときに起こるのかというと,転んだときに起こるのです.したがって,転ばないようなバランス感覚の良い体作りをすることは,骨折の予防につながり,このことが骨粗鬆症の治療にもつながると私は考えています.さて,人間は歩くとき必ず片足になります.したがって,片足になったときふらふらしているようでは,転びやすくなります.
 したがって,片足でどのくらい立っていられるかを計測し,体のバランスをチェックしているのです.
 また,片足立ちの練習をすることにより,片足で立っていられる時間を延ばすことができれば,体のバランス力を強化することになります.片足立ちの練習は,簡単にいつでもでき,しかもどのくらい効果が上がったかを簡単に知ることができるという点で非常に優れています.また,2 - 3週間という短期間で効果が現れます.



足の指も体のバランスにとって重要な働きをしている 

 このほかに,私は足の指にも注目しています.足の指をどのくらい上の方(頭の方)に曲げることができるのか,あるいは,どのくらい下の方(床の方)に曲げることができるのかをチェックします.
 実際に外来で足の指の曲げ伸ばしをチェックすると,意外とできないものです.原因は足の指を動かすと言うことを忘れているのです.文明人は固い靴を履いているので,ふだんから足の指を動かすことをあまりしません.しかし,足の指は体のバランスを取る上で大変大事な働きをしています.たとえば,柔道の達人は「足の指で畳をつかむ」ということを言いますし,また,戦国時代の足軽の戦闘用の足袋(たび)は,足をすっぽりと覆うものではなく,足の指のところと,かかとのところが露出するようにできています.戦場で転んでいては,命がいくつあっても足りません.

足の指の底屈

足の指の背屈

 足の指があまり動かない人に対しては,とにかく足の指を動かすことをさせます.また,直接手で足を他動的に動かしたりします.また,マッスル・エナジーというテクニックを用いて,足の指の筋肉を作動させるよう促したりします.あと,足の指を治療者が手で曲げてどのくらい曲がっているかを答えさせたりします.
 とにかく,足の指を動かすことを忘れているわけですから,このような治療をすると瞬間的に足の指がよく動くようになったりします.これはリハビリテーション医学の認知運動療法という分野に属するものですが,瞬間的に効果が現れるので,大変興味深い治療法です.
 片足立ち,足の指の運動は短期間で効果が現れますので,是非がんばってやってください.


総括
 骨量の検査でどんなに骨量が多いと言われても安心してはいけません.50歳以上の骨は20歳の人の骨とは違います.20歳の若い人の骨は,骨量の他に,柳の木のようなしない強さがあります.歳をとっていても男の人は比較的骨の多い人が多いのですが,それでもやっぱり折れるときには,ポッキリと折れてしまうものです.やはり,転倒防止のために,体のバランス力を養うことはもっとも必要です.短期間で効果が出ますので是非信じてがんばって行ってほしいものです.
 
 

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