骨粗鬆症診療録
骨粗鬆症目次 骨粗鬆症とは 食事療法 運動療法 伏見啓明整形外科へ
症例:77歳女性 |
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骨密度の推移
平成13年の初診時,骨密度を測定すると骨密度は低かった.さらに,10月にもう一度測定すると,減少していたので,ボナロンを投与した.また,患者さんは前向きに治療に取り組んだので,片足立ちも当初,5秒くらいしか立つことができなかったが,現在は30秒ほどできるようになった. 2月の3回目の骨量測定で骨量の上昇が認められた.薬の作用と運動療法が功を奏しつつあると考えている. 【注意】この症例で腰椎の骨密度が98%と高いが,下図のように腰椎椎間板の狭小化が生じ,それにより反応性に椎体の骨硬化が生じると,白さが増して骨密度を測定した際,異常高値がでることは珍しくない.したがって,当院では,骨密度を測定する際に,腰椎と大腿骨頸部で測定している. |
症例:67歳女性 |
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積極的に山登りを楽しむ活発な女性であるが骨量を計るといずれも70%以下と低値であり骨粗鬆症と診断した. 外見は元気そうであるが,片足立ちをさせると,なかなかうまく立つことができない.平衡感覚がかなり衰えている. 食生活をみると,カルシウム摂取量は1日774mgと十分であり,骨粗鬆症の原因は遺伝的なものの関与が考えられる. 骨量の減少を嘆いていても始まらない.まずは,スリーステップボンボン体操をしっかりとやって,片足立ちが10秒以上できるようになって欲しい.彼女ならば,1ヶ月間しっかりとやればできるようになるはずだ. 薬はダイドロネルを処方.2週間服用し3-4ヶ月休薬する. 彼女は若いし,元気であるので骨量の増加は大いに期待できる. |
症例:73歳女性 |
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骨密度は60%近くにまで低下し,また,大腿骨頸部の骨が粗である部分であるWard'sの値も50%を切り,大きく低下している.骨密度の点から見ると,大腿骨頸部骨折の危険性が一般の人より高いと考えざるを得ない. ただし,40代でテニス,そのあと水泳,気功というふうに運動に積極的に取り組んでいるので,元気であり,身体機能は良く,片足立ちも右は11秒,左は7秒である.安定感があり,2-3週間まじめに取り組めば,すぐに30秒くらい立つことができるようになるだろう.そうすれば,骨折の危険性を回避することが可能である. 母趾の底屈が30度であり,母趾の屈曲力が弱い.これは,ボンボン補助体操で鍛えていく必要がある. 食事の内容は良く,カルシウム摂取量も十分である.しかし,骨密度は低い.このようなケースでは,遺伝的要因もからんでいるのであろう. フォサマックを処方. |
症例:69歳女性 |
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スキーで手稲山を縦走し,写真を撮ることを仕事としている女性.がっちりとした筋肉質の体格をしており70歳にはとても見えない.骨量を計ると,いずれも80%を越え,大腿骨頸部の骨粗部であるWard'sも高い値を示している.骨量も70歳のレベルではなく,40代のものである.骨の健康は身体の健康を表すものである. 身体機能も良く,片足立ちは30秒以上楽にできる.安定感も抜群である. ただし,母趾を屈曲させることはあまりできない.この足趾を動かす力は体のバランスを取る上で重要である.このようなところから老化がしのびよってくることもある.しかし,練習すればこれは取り戻すことのできることだ.足趾の運動療法を指導. カルシウム摂取量も十分であり,また,骨量も十分であるので,当然であるが骨粗鬆症の薬は必要ではない. |
症例:67歳 女性 |
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特に運動をしているわけではないし,カルシウム摂取量も少ないのであるが,片足立ちの成績が良く,かつ,骨量も多い. 骨粗鬆症に遺伝的要因が示唆されているが,この女性は骨と運動機能で遺伝的に良いものを持っているのかもしれない. |
症例:75歳男性 |
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1シーズンに20 回以上スキー場に行く男性. 片足立ちは30 秒以上可能.安定感も良い.さすがである. ただし,大腿骨の骨量が少ないのが気になる.このくらい元気な人であれば,簡単に骨折が起きる心配はないだろうし,骨量が少ないからと言って,スキーをやめさせるのはナンセンスである.ただ,その少ない原因は食生活にあると思われる.カルシウム摂取量が128mg/日と非常に少なく,おそらく,このような食生活を50-60年間続けているのが原因ではないかと思われる. ワンアルファ(ビタミンD製剤)と,カルシウム剤を処方した. 北海道出身のプロスキーヤー,三浦雄一郎氏の父親が現在98歳であるが,スキーをほぼ毎日楽しみ,今年の夏にはモンブランを滑走することを計画しているという.彼を目指すと言っていた. |
症例:69歳 男性 |
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老健施設に入所中の男性.骨密度を測ると,左記のように非常に低値を示した. 片足立ちもあまりできず,時々ふらつくことがあると言い,杖をついて歩いている. 骨密度が低い,また,カルシウム摂取量も不十分なため,カルシウム剤,および,ワンアルファ(ビタミンD製剤),および,ダイドロネルを処方している. 来院時,母趾の底屈が30度とあまりできなかったので,母趾の背屈,底屈を行う体操を指導した.気軽に練習できるので本人は何気なくやっていたというが,2週間ほどで,底屈80度となる.階段は常に杖をついて歩いていたと言うが,ある時杖を忘れて上り下りをしていたという. あとは,片足立ちの練習をがんばって行い,バランス感覚をもっと上昇させて欲しいものだ. |
症例:44歳女性 |
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スナック経営者.夜の仕事に従事している人は生活が不規則になりがちであるが,この方もそうである. カルシウム摂取量が105mg/日と必要量である600 - 800mgを大きく下回っている.45歳であるので身体機能に問題はない. ただし,骨量は80%後半で,同年齢の人より15%ほど下回っている. このような食生活を続けていれば,10年20年後には骨量の大きな減少が予想される. まず,この人がやらなければならないことは食生活の改善と適度な運動であろう. |
症例:67歳女性 |
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当院に右大腿骨頸部骨折で搬入された患者さん(下にレントゲン写真あり). 右のデータは受傷後半年後のデータである. 右側は手術をして,手術器具(ねじ等)が挿入されているため骨密度は測定できない. 左の大腿骨をみると,骨密度は総合で45%,Ward'sは12%と恐ろしく低下している. 早めに受診し,転倒防止のプログラム,片足立ちの訓練を徹底的にすべきであったろう. これ以上,骨折を引き起こさないために,今後,改めて訓練してゆく必要がある. |
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症例:43歳女性 |
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某病院の看護婦さん.44歳と若いので片足立ち等の身体機能には何ら問題はない. ただし,骨密度が同年齢の15%減である. その原因として,カルシウムの摂取量が少ないという点があげられる.一日摂取量130mgはあまりにも少なすぎる.また,このような食生活がもう30年近く続いていると考えなくてはならない. この調子で,あと20年,30年と続くと一体どのようなことになるのであろうか.カルシウムは骨の材料.きわめて重要である. 骨粗鬆症の原因はいろいろと考えられるが,カルシウム摂取量が少ないと,骨量は減ってしまうことはまず間違いない. この人は,心を入れ替えてカルシウム摂取に心を配る必要があるだろう. |
症例:71歳 男性 |
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10歳より野球を始め50歳までやっていた.スポーツマンなので身体機能は良い.片足立ちはやったことがない,と言っていたが,ふらつきはあるものの30秒立つことができる. 食事も十分である. ただし,骨量が低い.腰が73%で大腿骨頸部は60%前後と,腰に比べて一段と低い.大腿骨頸部の骨が粗の部分であるWard'sはまた一段と低い.骨量は体全体で一様に減ってくるものではなく,局所で異なる減り方をするのである.この症例はその典型例である.70歳を過ぎている場合,腰よりも大腿骨頸部に骨量がある方が良いとされている.この症例の場合,大腿骨頸部骨折の危険性は大きいと意識すべきであろう. 十分に片足立ちの練習を積み,転倒防止を心がけることが必要である.また,50歳くらいまで野球をし,60歳までゴルフをしていたというが,また,ゴルフ等の運動を始められたら良いのではないかとアドバイスした. |