キセノンとは何か
キセノンとは希ガス元素の一つで元素記号はXeである.大気中にも微量に存在しており,無色,無臭の気体で発光させると白色の光を放つ性質がある.キセノンガスを使った放電管は太陽の光に似た連続スペクトルを放射させることができるので,この特性を利用して写真撮影のストロボに応用されたり,映写機の光源に使われたりする.キセノンは案外我々の身近に存在している元素なのである(写真右:キセノン治療器).
キセノンの治療原理
キセノン治療器は,キセノンが発する光のうち,近赤外線を利用して各種の痛みや腫脹を改善する装置である.キセノン光の発する近赤外線は生体を透過しやすい波長と同じ波長帯を持っている.これにより,皮膚表面を透過して体の深部を加温して,患部の血流量を増加させ,新陳代謝を促し治療することができる仕組みである.
従来の赤外線治療器は時々皮膚に熱が吸収され肌がピリピリすることがあったが,キセノンの場合にはそのような症状が現れることはまれである.
さて,皮膚を透過して深部に到達したキセノン光のエネルギーは各種酵素に作用し,痛みや褥創,腫脹などの治療をはじめ,細胞膜やシナプス,神経終末の活性化により,刺激の伝達も活性化される.これにより,自律神経反射の亢進が起こり,冷え性や不眠症の改善に役も効果がある.
キセノン治療器を実際に使用してみて
「従来からある,干渉波や低周波治療器は筋肉に電気を作用させ,筋肉のこりをほぐす器械であり,一方,慢性関節リウマチや変形性膝関節症のような,骨関節それ自身に障害のある疾患には直接的に有効には作用しません.これらの疾患には従来,渦流浴やホットパック,マイクロ波等しかなく,その有効性に物足りなさを感じていました.キセノンは手や膝にきちんと当てることができ,そのエネルギーを有効に患部に作用させることができる点で,従来の器機とは一線を画するものですね」と橋本院長.
また,帯状疱疹,頚肩腕症候群のように上肢の痛みを訴える患者さんに対して,首にキセノンを当てることにより,神経ブロックとして働き,疼痛を緩和することができるという.
「しかし,キセノンは決して魔法の器械ではありません.慢性関節リウマチや変形性膝関節症,帯状疱疹などにはあくまでも,薬物療法,運動・物理療法,生活指導等,総合的多面的に治療に取り組んでおり,キセノンはあくまでもそのうちの一つとしています.ただ,キセノンをかけた後,てきめんに効果が上がり,私も含めて治療スタッフ自身がびっくりさせられることもしばしばあります」と語っていた.
写真上:リウマチによる手の痛みに対してキセノンで治療しているところ
この記事は「月刊ケア(北海道医療新聞社)8月号に掲載された
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